モリアオガエルの生態
モリアオガエル(森青蛙) Forest green tree frog
カエル目 アオガエル科
旧学名 Rhacophorus arboreus
新学名 Zhangixalus arboreus
背面には緑色地に多くの不規則な褐色斑のある個体や,全く見られないものがある。山口町は,その両方が生息するため,両方の個体が見られる。主に木の上で暮らしているため,池周辺で見られるのは産卵期のみで,夜行性であるため通常見かけることはできない。
吸盤が発達しています
樹上生活の必需品
前肢は4本で,水かきが退化し,吸盤が発達しているため,どんな場所でもよじ登ることができる。オスの前足の内側には「婚姻瘤」と呼ばれるざらついた膨らみがあり,メスを抱接するのに役立つとともに,メスの体を締め付けて産卵を誘発する。メスは鳴かず,オスだけが喉にある鳴嚢を膨らませて,口を閉じた状態で,肺との間で空気を行き来させ「コロロ,コロロ」という高音の鳴き声でメスを呼ぶ。
擬態が得意です
隠れ身の術
皮膚表面は,周囲の環境に応じて「擬態」することができる。これは皮膚表面の「色素胞」が目から入ってきた情報に応じて変化するからであると考えられている。また,目の中で光を感じる細胞である「桿体細胞」を2種類もち,暗闇の中でも色の識別ができることが知られている。
シュレーゲルアオガエル
混同しやすい近種です
目にはまぶたがあり,虹彩は赤銅色で,近縁種で混同されやすい「シュレーゲルアオガエル」の虹彩は黄色であるため容易に区別ができる。また,間近で確認することができれば、モリアオガエルの肌はざらつきが目立つが,シュレーゲルアオガエルは平滑でなめらかな肌をしている。鳴き声も少し高音で「キリリ・キリリ」と鳴く。
樹上でひたすらメスを待ちます
繁殖は生まれ故郷の池にカエル
5月下旬から8月上旬まで,日没後の保存池周辺では「コロロ,コロロ」という高音の心地よいオスの鳴き声が響き渡る。オスは樹上でメスを待ち受け,メスは池にやってくると池の中に体を沈め,しばらくの間,腹の皮膚から池の水を膀胱にためる。
メスとの「包接」
産卵の準備が整いました
池の水と卵を抱えて,大きく膨らんだお腹になったメスは木をよじ登りオスと遭遇する。オスはすかさずメスの背後に回り,前肢の婚姻瘤でメスの首あたりを押さえ込み“おんぶ”をする形になって木の枝の先の方に進む。
後ろ足で卵塊を泡立てます
深夜、漆黒の中で行われる神秘
産卵は早くても午後8時頃から始まり,そのほとんどが深夜の時間帯に行われる。メスが出した粘液と卵に向けて,オスは精子をかけ,後肢でゆっくりとかき混ぜながら球体の卵塊(泡巣ともいう)を4〜5時間をかけて作り上げる。
メス1匹にオスが群がります
天敵に気を配りながら
卵は直径2.5mmほどで,1つの卵塊に200〜500個程度の卵が含まれている。産卵後1日目は白く,まるで卵白を泡立てた“メレンゲ状”だが,2日目以降は表面が乾燥すると黄色く変色し,厚さ1センチ程度の膜を作る。